大判カメラというものをご存知でしょうか。大判という言葉はライカ判、中判などと並ぶフィルムの規格の名称で大きさは4x5(in), 5x7(in), 8x10(in)のフィルムが多く使われています。他と大きく違うのは、ライカ判や中判フィルムのように一つのフィルムで複数カット撮ることはできず、1カットごとにフィルムを入れ替える必要があり非常に面倒です。
しかしながら、いまだに大判カメラは一定の人気を保っています。今回はライカ判のカメラとの作例比較を行いながら、その実力に迫っていこうと思います。
しかしながら、いまだに大判カメラは一定の人気を保っています。今回はライカ判のカメラとの作例比較を行いながら、その実力に迫っていこうと思います。
0. 大判カメラの特徴と実運用
①大判フィルムを使うカメラ
大判カメラとは大判フィルム(シートフィルム)を使用するカメラのことを指します。大判フィルムの規格は一般的なサイズだと4x5(in), 5x7(in), 8x10(in)があり、それぞれのサイズに応じたカメラを使用する必要があります。下の図に4x5のフィルムサイズがどれほどの大きさなのかを表現しました。4x5でもかなり大きい事がわかります。

現在手に入る大判フィルムの種類とその感度は以下の通りです。
135フィルムや中判フィルムほどの選択肢はありませんが十分なラインナップではないでしょうか。値段は大体50カットで5000円~10,000円程度です。赤外撮影も可能ですし(Infrared400)、高解像に特化した微粒子フィルムもあり、ある程度の増感も可能な汎用フィルムも選択できます。
②大判フィルムの現像方法
大判フィルムの自家現像には4つの選択肢があります。
1. 皿現像
印画紙現像用のバットを使用して現像する方法です。全暗室で行う点や、手探りで時間をはかる事など難易度は高いですが、新しく機材を買い足す必要が無いので暗室を持っている方には良いかもしれません。
2. 輪ゴムで丸めて現像タンクに投入
乳剤面が内側になるようにフィルムを輪ゴムで丸め、現像タンクに隙間なく詰め込むことで現像できます。初期投資が少なく、簡単にできるので最初は良いかもしれません。
フィルムに傷が付いたり、端部で現像不良が発生することがあるので少し難しいです。
3. MOD54 + マルチリール3
4x5フィルムを6枚まとめることで、パターソンのマルチリール3(ライカ判フィルムが3本入るタンク)に入れることができ、そのまま通常のフィルム現像と同様の手順で現像する方法です。
既存の道具を使用できることや、B&Hで大体6000円くらいで購入できる点がお手軽です。しかしながら、フィルムの取り付けが結構難しかったり、攪拌時にネガが器具から外れることがあるので、難易度は高いです。
4. SP445
4x5フィルムを4枚まとめて現像できる現像タンク&リールです。フィルムの装填の方法が簡単で、失敗もしづらいので最も安定して使いやすい方法です。
B&Hで大体10000円くらいと少し高価ですが、現像に失敗した時のフィルム代のことを考えると、それほどコストパフォーマンスの悪い選択肢というわけではないのかもしれません。
③大判フィルムのプリント方法
大判フィルムのプリントには2つの選択肢があります。
1. 密着プリント
印画紙の上にフィルムをかぶせ、ガラスなどで紙とネガを圧着し、引き伸ばし機の光を当ててやることでプリントします。所謂、「ベタ焼き」と同じことをしています。
引き伸ばし機の種類にかかわらずプリントができる点はお手軽ですし、そもそも大判カメラが生まれた当初というのは密着プリントが使用されていたのでカメラとして素直な使い方だと思います。
一方で、プリントのサイズがネガサイズに完全に依存してしまうので、大きなプリントを作るにはそれだけ大きなネガを使用する必要があります。
2. ネガ引き伸ばし
4x5や8x10に対応している引き伸ばし機は数は多くないですが存在します。8x10の引き伸ばし機は非常に大きく、一般家庭に設置することは難しいですが、4x5の引き伸ばし機であれば十分に可能です。レンズは135mm以上の焦点距離の物を使用します。
良い点としては4x5サイズのネガで4つ切りや半切のプリントが作れるので、大きなフォーマットの恩恵を十分に受けることができます。
難点は、それなりに大きく重いので現像するときだけ浴室に移動するという事が非常に難しい事と、ライカ判フィルムなどをプリントするときに焦点距離が50mm程度の物を使用した場合、フランジバックが大きすぎてプリントが難しい点です。
④大判カメラのデジタル化
現在、大判フィルムのデジタル化には二つの選択肢があります。
1. GTX980
フラッドヘッドスキャナのGTX980では4x5のスキャンが可能です。スキャナで大判フィルムが対応しているのは実質GTX980のみです。
2. デュープ
デュープを使えば、基本的には物撮りと変わらないのでフォーマットにかかわらず対応できます。ネガキャリアとライトボックスがあればより簡単に作業ができます。
1. 大判カメラの作例比較
では実際に大判カメラの画質というのはどの程度のモノなのでしょうか。今回はライカ判フィルムとの比較を行いました。Rodinalの在庫がなく、また国内で注文できる場所もなかったので傾向の近いSilversalt Developerを選択しました。
※以前、SilversaltとRodinalとPerceptolの違いを比較しました。ご参考までに。
カメラ:TOYO45A(4x5), NikonFE(135)
レンズ:FUJINON W210mm5.6, Nikkor50mm1.4
フィルム:Arista EDU Ultra400
現像液:Silversalt Developer
左:TOYO45A, 右:NikonFE




描写の差に関しては全体画像においても差が出始めていますが、拡大すると如実に差が出ていることがわかります。粒子感の差も大きいですが、諧調も大判カメラの方がなめらかです。やはり大きなフォーマットの恩恵というのはあるようですね。
2. 総評
大判カメラをとりまく環境と、その描写能力に関して今回はレビューしていきました。撮影単価はそれなりに高価ですが、それと引き換えに得られる画質も非常に高い物であることがわかります。
特に引き伸ばし機に関しては良いものが手に入れにくく、躊躇してしまう人も多いですが一度だけでもWSなどで触れられてみてはいかがでしょうか。
①大判フィルムを使うカメラ
大判カメラとは大判フィルム(シートフィルム)を使用するカメラのことを指します。大判フィルムの規格は一般的なサイズだと4x5(in), 5x7(in), 8x10(in)があり、それぞれのサイズに応じたカメラを使用する必要があります。下の図に4x5のフィルムサイズがどれほどの大きさなのかを表現しました。4x5でもかなり大きい事がわかります。

現在手に入る大判フィルムの種類とその感度は以下の通りです。
135フィルムや中判フィルムほどの選択肢はありませんが十分なラインナップではないでしょうか。値段は大体50カットで5000円~10,000円程度です。赤外撮影も可能ですし(Infrared400)、高解像に特化した微粒子フィルムもあり、ある程度の増感も可能な汎用フィルムも選択できます。
②大判フィルムの現像方法
大判フィルムの自家現像には4つの選択肢があります。
1. 皿現像
印画紙現像用のバットを使用して現像する方法です。全暗室で行う点や、手探りで時間をはかる事など難易度は高いですが、新しく機材を買い足す必要が無いので暗室を持っている方には良いかもしれません。
2. 輪ゴムで丸めて現像タンクに投入
乳剤面が内側になるようにフィルムを輪ゴムで丸め、現像タンクに隙間なく詰め込むことで現像できます。初期投資が少なく、簡単にできるので最初は良いかもしれません。
フィルムに傷が付いたり、端部で現像不良が発生することがあるので少し難しいです。
3. MOD54 + マルチリール3
4x5フィルムを6枚まとめることで、パターソンのマルチリール3(ライカ判フィルムが3本入るタンク)に入れることができ、そのまま通常のフィルム現像と同様の手順で現像する方法です。
既存の道具を使用できることや、B&Hで大体6000円くらいで購入できる点がお手軽です。しかしながら、フィルムの取り付けが結構難しかったり、攪拌時にネガが器具から外れることがあるので、難易度は高いです。
4. SP445
4x5フィルムを4枚まとめて現像できる現像タンク&リールです。フィルムの装填の方法が簡単で、失敗もしづらいので最も安定して使いやすい方法です。
B&Hで大体10000円くらいと少し高価ですが、現像に失敗した時のフィルム代のことを考えると、それほどコストパフォーマンスの悪い選択肢というわけではないのかもしれません。
③大判フィルムのプリント方法
大判フィルムのプリントには2つの選択肢があります。
1. 密着プリント
印画紙の上にフィルムをかぶせ、ガラスなどで紙とネガを圧着し、引き伸ばし機の光を当ててやることでプリントします。所謂、「ベタ焼き」と同じことをしています。
引き伸ばし機の種類にかかわらずプリントができる点はお手軽ですし、そもそも大判カメラが生まれた当初というのは密着プリントが使用されていたのでカメラとして素直な使い方だと思います。
一方で、プリントのサイズがネガサイズに完全に依存してしまうので、大きなプリントを作るにはそれだけ大きなネガを使用する必要があります。
2. ネガ引き伸ばし
4x5や8x10に対応している引き伸ばし機は数は多くないですが存在します。8x10の引き伸ばし機は非常に大きく、一般家庭に設置することは難しいですが、4x5の引き伸ばし機であれば十分に可能です。レンズは135mm以上の焦点距離の物を使用します。
良い点としては4x5サイズのネガで4つ切りや半切のプリントが作れるので、大きなフォーマットの恩恵を十分に受けることができます。
難点は、それなりに大きく重いので現像するときだけ浴室に移動するという事が非常に難しい事と、ライカ判フィルムなどをプリントするときに焦点距離が50mm程度の物を使用した場合、フランジバックが大きすぎてプリントが難しい点です。
④大判カメラのデジタル化
現在、大判フィルムのデジタル化には二つの選択肢があります。
1. GTX980
フラッドヘッドスキャナのGTX980では4x5のスキャンが可能です。スキャナで大判フィルムが対応しているのは実質GTX980のみです。
2. デュープ
デュープを使えば、基本的には物撮りと変わらないのでフォーマットにかかわらず対応できます。ネガキャリアとライトボックスがあればより簡単に作業ができます。
1. 大判カメラの作例比較
では実際に大判カメラの画質というのはどの程度のモノなのでしょうか。今回はライカ判フィルムとの比較を行いました。Rodinalの在庫がなく、また国内で注文できる場所もなかったので傾向の近いSilversalt Developerを選択しました。
※以前、SilversaltとRodinalとPerceptolの違いを比較しました。ご参考までに。
カメラ:TOYO45A(4x5), NikonFE(135)
レンズ:FUJINON W210mm5.6, Nikkor50mm1.4
フィルム:Arista EDU Ultra400
現像液:Silversalt Developer
左:TOYO45A, 右:NikonFE




描写の差に関しては全体画像においても差が出始めていますが、拡大すると如実に差が出ていることがわかります。粒子感の差も大きいですが、諧調も大判カメラの方がなめらかです。やはり大きなフォーマットの恩恵というのはあるようですね。
2. 総評
大判カメラをとりまく環境と、その描写能力に関して今回はレビューしていきました。撮影単価はそれなりに高価ですが、それと引き換えに得られる画質も非常に高い物であることがわかります。
特に引き伸ばし機に関しては良いものが手に入れにくく、躊躇してしまう人も多いですが一度だけでもWSなどで触れられてみてはいかがでしょうか。

コメント