以前から高温現像のチャレンジをしていますが、ネガに発生する皺の問題と粒子感の両立がいまだに解決できていません。そこで今回は新しいアプローチとして、印画紙用現像液を用いた現像の検証を行います。
0. これまでの挑戦と課題
これまで3つの現像を試しましたが、それぞれに課題が残るものでした。また、いわゆる「森山大道」風を高温現像の到達点と考えていましたが、プリントの段階でかなりコントラストを上げていると思われるので、粒子感の荒れを目指します。
第一回目検証
コンセプト:高温現像が流行った時期の現像条件を再現
Film : TriX
Dev : D76(1+1)
Temp : 40℃(湯せんなし)
Time : 5.0min
コメント
・粒子の荒れ、コントラスト両方とも通常現像と大きな違いはない。
・高温現像としての効果はほぼない
・TriXはマイナーチェンジによって当時の物とは別物になっている
第二回検証
コンセプト:粒子感とコントラストに引き上げ
Film : TriX
Dev : Rodinal(1+50)
Temp : 40℃(湯せんあり)
Time : 11.0min
コメント
・荒れ感は達成している
・コントラストは高い
・乳剤にしわが入っていて、特にハイライト部でかなり目立つ
第三回検証
コンセプト:乳剤の割れ対策
Film : TriX
Dev : D76(1+2)
Temp : 40℃(湯せんあり)
Time : 11.0min
※乳剤の割れを防ぐため、薬品の温度変化に注意して作業
コメント
・荒れ感は達成している
・コントラストは高い
・ハイライト部の明るさはRodinalより良好
・乳剤にしわが入っていて、特にハイライト部でかなり目立つ
以上のことから、高温現像らしさを追及すると乳剤に割れが生じています。乳剤の割れは、急激な温度変化によって発生するという定説がありますが、現像液に10分程度浸すことでも発生するようです。
1. 現像条件の設定
過去の実績から、乳剤の割れは高温現像液に10分以上浸すことで発生していることが推測されます。一方で、古典的な現像液では現像力の低さから10分程度の現像時間がないと、高温現像らしさは見られません。
そこで今回は、フィルム用よりも強力と言われる印画紙用の現像液を用いて現像します。現像条件の詳細に関してはあまり情報がなかったので下記の三パターンを試してみました。
Film :HP5+
Dev. :Papitol
Camera :Olympus PenS
※Papitolは通常4Lに溶解させるのを2Lに溶解させ二倍濃縮液としています。
Case1
希釈 :1+2(2倍濃縮原液200ml+水400ml)
正味割合 :66%
現像温度 :40℃
現像時間 :5min
設定感度 :ISO1600
Case2
希釈 :1+9(2倍濃縮原液100ml+水900ml)
正味割合 :20%
現像温度 :40℃
現像時間 :4min
設定感度 :ISO3200
Case3
希釈 :1+40(2倍濃縮原液25ml+水1000ml)
正味割合 :5%
現像温度 :40℃
現像時間 :4min
設定感度 :ISO3200
これらのネガを左から順に並べるたのが、以下の写真です。Case1ではかなりネガ濃度が濃いことがわかります。実行感度はISO1600くらいかと思います。
それでは、作例を通してそれぞれの条件でどの程度うまくいったのか見ていきましょう。
2. 作例
左側に作例、右側に拡大画像を表示しています。
Case1
Case2
Case3
Case1からCase3に行くにしたがって粒子感は低下し、乳剤の割れが見られます。細かく確認すると、Case1, Case2でも乳剤の割れは発生していますが、粒子に比べて非常に小さいので拡大画像でもあまり目立ちません。一方でCase3は粒子感が低下し、乳剤の割れが目立つようになっています。
次に単純なネガ反転から、コントラストを高くして森山大道風にすると以下のようになります。
Case1
Case2
Case3
どれも面白い結果になっていますが、Case1はやや粒子感が強すぎる気がします。粒子感はCase1とCase2の中間くらいがベターだと思いますが、ライカ判をフルで使う際にはCase1でも良いと思います。
3. 総評
今回の検証では乳剤の割れを抑えて、高い粒子感を何とか達成できました。ただ、Case1の現像したネガの濃さはかなりのもので、実際の取り扱いを考えるとCase2をベースにした方が良いかもしれません。かつての高温現像の話を見ていると、引き伸ばしの際の露光時間に数分かかった等と聞くので、Case1が最も近いでしょう。個人的には粒子感の好きなCase1の方で撮ろうと思います。
今回でまともな高温現像の結果が得られたので、高温現像の検証はこれで終わりです。みなさんも一度は高温現像をされてみてはいかがですか?
これまで3つの現像を試しましたが、それぞれに課題が残るものでした。また、いわゆる「森山大道」風を高温現像の到達点と考えていましたが、プリントの段階でかなりコントラストを上げていると思われるので、粒子感の荒れを目指します。
第一回目検証
コンセプト:高温現像が流行った時期の現像条件を再現
Film : TriX
Dev : D76(1+1)
Temp : 40℃(湯せんなし)
Time : 5.0min
コメント
・粒子の荒れ、コントラスト両方とも通常現像と大きな違いはない。
・高温現像としての効果はほぼない
・TriXはマイナーチェンジによって当時の物とは別物になっている
第二回検証
コンセプト:粒子感とコントラストに引き上げ
Film : TriX
Dev : Rodinal(1+50)
Temp : 40℃(湯せんあり)
Time : 11.0min
コメント
・荒れ感は達成している
・コントラストは高い
・乳剤にしわが入っていて、特にハイライト部でかなり目立つ
第三回検証
コンセプト:乳剤の割れ対策
Film : TriX
Dev : D76(1+2)
Temp : 40℃(湯せんあり)
Time : 11.0min
※乳剤の割れを防ぐため、薬品の温度変化に注意して作業
コメント
・荒れ感は達成している
・コントラストは高い
・ハイライト部の明るさはRodinalより良好
・乳剤にしわが入っていて、特にハイライト部でかなり目立つ
以上のことから、高温現像らしさを追及すると乳剤に割れが生じています。乳剤の割れは、急激な温度変化によって発生するという定説がありますが、現像液に10分程度浸すことでも発生するようです。
1. 現像条件の設定
過去の実績から、乳剤の割れは高温現像液に10分以上浸すことで発生していることが推測されます。一方で、古典的な現像液では現像力の低さから10分程度の現像時間がないと、高温現像らしさは見られません。
そこで今回は、フィルム用よりも強力と言われる印画紙用の現像液を用いて現像します。現像条件の詳細に関してはあまり情報がなかったので下記の三パターンを試してみました。
Film :HP5+
Dev. :Papitol
Camera :Olympus PenS
※Papitolは通常4Lに溶解させるのを2Lに溶解させ二倍濃縮液としています。
Case1
希釈 :1+2(2倍濃縮原液200ml+水400ml)
正味割合 :66%
現像温度 :40℃
現像時間 :5min
設定感度 :ISO1600
Case2
希釈 :1+9(2倍濃縮原液100ml+水900ml)
正味割合 :20%
現像温度 :40℃
現像時間 :4min
設定感度 :ISO3200
Case3
希釈 :1+40(2倍濃縮原液25ml+水1000ml)
正味割合 :5%
現像温度 :40℃
現像時間 :4min
設定感度 :ISO3200
これらのネガを左から順に並べるたのが、以下の写真です。Case1ではかなりネガ濃度が濃いことがわかります。実行感度はISO1600くらいかと思います。
それでは、作例を通してそれぞれの条件でどの程度うまくいったのか見ていきましょう。
2. 作例
左側に作例、右側に拡大画像を表示しています。
Case1
Case2
Case3
Case1からCase3に行くにしたがって粒子感は低下し、乳剤の割れが見られます。細かく確認すると、Case1, Case2でも乳剤の割れは発生していますが、粒子に比べて非常に小さいので拡大画像でもあまり目立ちません。一方でCase3は粒子感が低下し、乳剤の割れが目立つようになっています。
次に単純なネガ反転から、コントラストを高くして森山大道風にすると以下のようになります。
Case1
Case2
Case3
どれも面白い結果になっていますが、Case1はやや粒子感が強すぎる気がします。粒子感はCase1とCase2の中間くらいがベターだと思いますが、ライカ判をフルで使う際にはCase1でも良いと思います。
3. 総評
今回の検証では乳剤の割れを抑えて、高い粒子感を何とか達成できました。ただ、Case1の現像したネガの濃さはかなりのもので、実際の取り扱いを考えるとCase2をベースにした方が良いかもしれません。かつての高温現像の話を見ていると、引き伸ばしの際の露光時間に数分かかった等と聞くので、Case1が最も近いでしょう。個人的には粒子感の好きなCase1の方で撮ろうと思います。
今回でまともな高温現像の結果が得られたので、高温現像の検証はこれで終わりです。みなさんも一度は高温現像をされてみてはいかがですか?
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