過去にすでに二回実施している高温現像ですが、今回は新たに得られた知見を基に、D76を使っての高温現像に挑戦していきます。

過去の高温現像挑戦




0.前回の挑戦と課題
前回のD76での高温現像の挑戦とその結果は以下の様なものでした

現像条件
Film :TriX
Developer :D76(1+1)
Temperature :40℃(湯せんなし、最終温度は36℃)
Time :5.0min.
ISO :3200

結果コメント
・粒子の荒れが想定以下
・コントラストが想定以下
・印象としては通常の現像と大きくは変わらない

一方でRodinalの高温現像の結果は以下のようなものでした

現像条件
Film :TriX
Developer :Rodinal(1+50)
Temperature :40℃(湯せんあり)
Time :11.0min.
ISO :3200
※ハーフサイズカメラにて実施

結果コメント
・粒子の荒れが想定程度
・コントラストはややもっさり
・印象としては高温現像になっていた
・しわ模様が見られた

以上の事から、しわ模様の出ていないD76と粒子とコントラストの良好なRodinalの良い所を得られるような現像を実現させようという試みです。

1. 現像条件の設定
現像時間は基本的には長くなるほど粒子は荒くなります。そこで前回のD76の5min.からRodinalの11min.に修正し、それに応じて希釈割合を1+1から1+2としました。なお、推定式から1+2の時の現像時間は6min.となりますが、現像時間を優先しました。1+2以上の希釈での現像データがなかったため、この条件とします。
また、しわ模様に関しては急激な温度変化によって乳剤がひび割れてしまうとの情報が得られたので、停止液、定着液ともに40℃程度に温度管理を行い、急激な温度変化を起こさないようにしました。
くわえて粒子感がわかりやすいようにハーフサイズカメラを使用しました。


現像条件
Film :TriX
Developer :D76(1+2)
Temperature :40℃(湯せんあり)
Time :11.0min.
ISO :3200
※ハーフサイズカメラを使用

2. 作例
DSC_4123DSC_4123-2












DSC_4126DSC_4126-2












DSC_4129DSC_4129-2












DSC_4130DSC_4130-2












粒子感という点では粒子そのものは見られませんが、しわ模様のために結果的に荒れた印象となっています。コントラストに関してはちょうどいいくらいです。しわ模様に関しては、温度管理しましたが残念ながら改善されていません。
総合的には日陰などシャドー部が多ければしわ模様も目立たずかっこいいですが、ハイライト部では目障りな印象を受けます。ただ高温現像は実行感度が800~3200程度になるので、実質的には暗めのカットが多くなり、あまり目立たなくなることも多いでしょう。

個人的な感想としては、SNSなどで写真載せるくらいなら面白い描写で良いと思います。一方で、手焼きする場合にはかなりしわ模様が目立つことが予想されるので、おすすめはしません。
また、D76はRodinalよりも粒子感はおとなしく、コントラストは強めに出ているのでこちらの方が扱いやすいです。Rodinalは解像感を著しく低下させるくらいに粒子が荒れるので、アイデア次第だと思います。

3. まとめ
前回から粒子とコントラストの改善を狙っての現像を行い、その目的は達成されました。一方で、しわ模様への対策は成功していないのが残念な点です。
結果的には描写としては満足ですが、しわ対策を講じた結果が得られるよう追加で現像してみようと思います。過去の条件から推測されるに、温度を下げるか現像時間を減らせば対応できるように思いますので、次回はそこら辺を考えてみたいと思います。