フィルム現像が1万円で始められるのは先の記事の通りですが、難しそうだし大変そうだというイメージがあるかと思います。


そこで、現像を思いたってからネガができるまでの30分を動画と画像付きで紹介していきます!
フィルム現像に関しては、様々な技術や手法があります。ここでは扱いやすく、スタンダードなものでまとめています。詳細に関してはいただいたコメントを基に追記していきます。



フィルム現像の流れ
フィルムの現像は以下の図の通りに行います。

develop


それぞれにかかる時間は、フィルムや薬品の種類、気温などでも変わりますが大体一回現像するのに30分くらいです。乾燥が終わったら6カット分ごとにネガを切って保存しましょう。
一回の現像で処理できる本数は現像タンクの大きさに依りますが、135フィルムなら2本できるものが使いやすくてよいです。今回はFomapan400を現像していきたいと思います。作業項目の横に経過時間を併記します。

※現像作業のいくつかの部分では薬品やフィルムの種類によって取り扱いが少しずつ変わってきます。


フィルムローディング(1min. 作業, 1min. 経過)
フィルムローディングは完全な暗室(以下全暗室)にて作業を行います。暗室に赤いランプがぼんやりついているイメージをお持ちの方がいるかもしれませんが、それは印画紙にプリントする時に印画紙が赤い光に対して感光しにくい性質を利用しているものです。フィルムを取り扱うときには使えません。
全暗室内でフィルムローディングを行い、現像用タンクにリールを入れて蓋をすれば以降は明室での作業が可能となります。

DSC_1767
フィルムの先端の角を落とす。この方が暗室作業でのミスは少ない。

DSC_1768
初めの数センチをリールに引っ掛けてから暗室作業をすると、後の作業が簡単になる


一番初めに現像するときは、ダメになっても良いフィルム(期限切れのフィルムや24枚撮りの安いやつなど)で一度操作してみて操作感を覚えてから本番に入った方がいいでしょう。


現像液・停止液・定着液の作成(3min. 作業, 4min. 経過)
それでは、現像液,停止液,定着液を順に投入していきフィルムに像を作り明室で見れるようにしましょう。まずは薬品を作ります。


1. 現像液
薬品がメーカー指定のモノであれば、フィルムの箱の裏側に現像液の温度と処理時間が記載されています。もしくは、薬品のパッケージに記載されています。メーカーが保証している数値なので、特に狙いが無ければこれらに従うのが良いです。
どちらにもない場合はDighital truth photoというサイトにて様々なデータがあるので、こちらで調べてみましょう。

develop2

左端にあるプルダウンボタンからフィルムと薬品の銘柄を選び、Serchボタンを押すと指定のフィルムと現像液でのデータを見れます。

develop3

左から順にフィルム、現像液、希釈割合、感度設定、フィルムサイズ(ライカ判、中判、大判)ごとの現像時間、温度、備考欄の順に書かれています。
今回、現像液を510ml作ろうと思いますのでロジナール(10ml)と20℃の水(500ml)を混ぜ合わせて現像液とします。
DSC_1774
10mlのロジナールを図るときは目の細かいもので図ります


2. 停止液
富士の酢酸(50%)をつかって、1.5~3%の停止液を作ります。500mlを作るには20ml(酢酸10ml)の酢酸に480mlの水を混ぜ合わせます。液温は20℃くらいにしましょう。
※停止液の役割は、現像液(アルカリ性)と中和反応をさせ、定着液(酸性)の疲労を和らげることです。水で代用されることもあります。私は酢酸を目分量でいれて、使い捨てにしています。

3. 定着液
定着液は水で希釈して使います。希釈割合はパッケージに記載されていますので、そちらを参照してください。液温は20℃くらいにしましょう。

DSC_1772
こちらでは1+7との事なので125mlのアドフィクスに875mlの水を加えて定着液とします。


現像・停止・定着・水洗の実行(25min. 作業, 26min. 経過)
1.現像
現像液は溢れないよう丁寧に早く入れて、全ての現像液を入れ終わったら連続で30秒攪拌し泡抜きします。先ほど調べた現像時間(11min.)までを計測するためにタイマーをセットします。以降、1分ごとに5秒の攪拌と泡抜きを行います。
慣れてくると以降の作業はテレビを見ながらでもできるようになります。(おすすめはしませんが)

snapshot4
現像前にそれぞれの薬品の把握がしやすい配置にすると良い。現像液(左), 停止液(中央), 定着液(右)。

現像液投入から最初の攪拌とエア抜きの終わるまで

2. 停止
現像が終わったらピッチャーに現像液を戻し、停止液を注ぎます。以降、一分間の連続攪拌と最後に泡抜きを行います。

停止液投入から定着液の初期攪拌とエア抜きまで

3. 定着
停止が終わったらピッチャーに停止液を戻し、定着液を注ぎます。後は現像液と同じ要領で最初に30秒連続攪拌、あとは1分ごとに5秒の攪拌と泡抜きを行います。定着に必要な時間は薬品の状態や種類によってまちまちですが、今回はパッケージに従って最大の8分とします。
※定着液の温度は現像液ほどシビアではありませんが、20℃程度で作業を行ってください。

4. 水洗
定着が完了したら水洗を行います。フィルムに残ったステイン(フィルムがやや赤みがかっている状態です)や定着液を除去するために、水(場合によっては水洗促進剤も併用)で攪拌させます。この時、水洗に使用する水の温度は25℃程度にしておくと落ちやすいです。
これでステインが取り切れない場合は、定着液の処理能力の低下が考えられるので、再度温度を確認したものや新しい定着液で2~3分程度行えば落ちることも多いです。

定着終了から水洗終わりまで。30℃くらいの水を使うと早くステインが落ちる傾向にあります。

まとめ
上記のようにフィルム現像はフィルムローディングさえ終わってしまえば、あとは薬品を入れ替えていくだけなので場所もあまり必要とせずお手軽です。だいたい100円弱で30分でできます。水洗が完了したら、埃の少ないところでフィルムクリップを使って乾燥させましょう。処理後の廃液に関しては、下水に流すのが簡単な方法の中では良いようです。
ネガからポジ(ネガ反転していない画)を見るためには、乾燥させたネガをスキャンしてデータ化するか、プリントを作ることになります。プリント作成では暗室と引き伸ばし機が必要になるので、レンタル暗室を利用するのが手軽で良いかと思います。データ化に関しては別ページにて紹介します。